ビート!ビート!ビート!Vol.3

 最近のポップス界はエレキ・ギター・サウンドに独占されている。このエレキ・ブームは現代文明の電機科学の発達により誕生したのであり、その強い脈打つビート・サウンドは混乱した現代杜会への反抗であり、又ある意味では現代社会の必然的な発生でもある。我々の生活の中で最っとも親しまれ、最っとも身近に感じられ、最っとも手にしている楽器は勿論、ギターなのです。そして今では、ギターと言えばエレキ・ギターなのです。演奏のテクニックにプラスして、エコー・チェンバー、アンプ等の装置に対する創意工夫が必要であり、それらの装置の性能をフルに利用出来ることが大切なのです。というのはギターリストである以前に電機技術者でなければ一流のギター・プレヤーにはなれないとまで還元する人もいるのです。サーフィン、ホッド・ロッド、リバプール・サウンド、スイム・・・を称して“Big Beat”とエヴァ・ニューな魅惑的なニック・ネームがつけられ、レコード界はギクー・サウンドのアルバムが氾濫し、楽器店では高価なエレキ・ギターが飛ぶように売れ、メーカーはうれしい悲鳴をあげているとか。さらに驚いたことにはテレビ番組にのど自慢ならぬ“エレキ勝抜合戦”なる視聴者参加番組が企画制作され、腕自慢が競って出場応募し、出演者を整理するために数回の予選が設けられ、狭き門を通過した者達のみが出場出来るというほどなのです。ザ・ヴェンチャーズが65年正月に引き統き3度目の来日を果たし、エレキ・ギター・ブームはいやが上にも盛り上げられている。そうした中で、寺内タケシとブルー・ジーンズはザ・ヴェンチャーズやアストロノウツなどの来日したグループと共演し、互角にプレイし、彼らに勝るとも劣らない実力を持ち、あらゆる努力に精進し、世界的な水準に達っした実力と人気を名実共保持し、日本最高グループとしてテレビにラジオにステージに活躍しているのです。寺内タケシがギターを手にした時から、ギターに問い統け、或る時は戦いを挑み、又或る時は接吻してきたのは、歌手の流露する感情をギターの言葉でいかに語らすかということであった。ウェスターン・ミュージックを愛し続けながらギター・サウンドのロック・コンボを編成し、昨年あたりまでごくありふれたロック・バンドであったが、今のエレキ・ギター3本。それにドラムス、エレキ・ベース、エレクトーンの電機楽器に編成しなおした時には、ある種の反対はあったが、私案を押し通し、今の人気にグループを育てた彼。
 猫の目のように変る、明日の自分の存在が予想できない激しい波に負けないために常に肌で感じたままを演奏にぶつけるブルー・ジーンズの今後に期待しましょう。このアルバムでは寺内タケシの持つセンスの良い構築された編曲に、外国のプレヤーの二番煎じではないフィンガー・ポッピングなテクニック、フェンダー製のギター、ジャガーとデラックス・エコー・チェンバー、アンプのメカニックを駆使しての素晴らしい演奏をお楽しみ下さい。

〈SIDE 1〉
1. 逃亡者
 エル・ジョズウィの作曲になるこの曲、テレビ映画“逃亡者”はおなじみのデビット・ジャンセンの紛するリチャード・キンブルがジェラード警部の執幼な追求をのがれて、影をよぎり、闇をぬって逃亡する・・・あの番組には関係ないベンチャーズでおなじみのオリジナルなのである。エコーを利用したメンバーの遠吠えがスリリングな感じを出している。エキゾチック・サウンド的な演奏が楽しいです。
2. ゲーム・オブ・ラヴ
 ヒット・パレードのトップにチャートされた、この曲はマンチェスター生まれのウェイン・フォンタナとマインド・ベンダーズが放った驚異的なヒット曲で、作詩・曲はクリント・ドラードJr. シャンペン・ミュージックの王様R・ウエルグなどで親しまれているものとは全然別なもので後者は映画“Happy Hunting”の主題曲である。素晴らしいフィンガー・ポッピングなテクニックとギターとエレクトーンのかけあいのおもしろさをお楽しみ下さい。
3. 雨に消えた想い
 フォーク・ソングの女王、ジョン・バエズがギターの弾語りでシミジミ聞かせていたこのメロディー、若さ溢れるリヴァプール・サウンドの雄ザ・サーチャーズ(Love Portion No.9)などでおなじみですが、ここでは生ギター風なソロにエレクトーンがバックに流れ、ドラムのこまかくきざむ歯切のよいリズム、コンビネーションの良さに感心させられることでしょう。
4. オン・ザ・ビーチ
 さきほどの“Game of Love”と同じように同名の曲があり、よく間違えられる。1959年に封切られた映画“On the Beach”(渚にて)に使用されたS・アレン作詩、E・ゴールドの主題歌とは別なものである。英国の人気歌手クリフ・リチャードの主演映画“Wondefful Life”の主題歌で、作詩・曲はシャドウズのメンバー、B・ウェルクとH・マーヴィンである。ダイナミックなイントロダクション、メンバーのコーラスが飛び出す“ヘイ!カーペンター”はドラムの工藤のアダ名なのである。声を出し楽しさにあふれた演奏です。
5. ドンナ・ドンナ
 さきほどの“雨に消えた想い”を歌ったフォークの女王ジョン・バエズ、そしてフランスの人気歌手クロード・フランソワの歯切れのよい持味、フォーク・ソングの持つ単体で素朴なところがかくれたヒットとされ、口笛をまじえたり、ストレートな生ギター的にあまり編曲を凝ったものにしなかったのがとても印象的です。
6. 若草の恋
 来日したことのある、おなじみのイタリアの人気女優カトリーヌ・スパーク。「太陽の下の18才」、「恋のなぎさ」などに主演。歌手としても知られているが、意外なことに「ほほにかかる涙」の作者でルネーロなる筆名を持ち創作活動もしているから驚きである。かなり音色の変ったギターのソロ・ワーク、エレキ・ギター・サウンドで聞くカンツォーネもなかなか洒落ていていいですね。
〈SIDE 2〉
1. クルエル・シー
 ベンチャーズの三度目の来日でヒットが予想されているこの曲はマックスフィールドのペンになるもので、実力の伯仲したプルー・ジーンズとの聞き比べも楽しいでしょう。互角とは行かなくても、ブルー・ジーンズ独特のサウンドを作りだし、ベンチャーズとはちがった持味が生かされていて、この種のナンバーが一番安心して聞けるのは立派と言わねばならないでしょう。
2. クライング・イン・ザ・チャペル
 1953年にこの作曲者アーチ・グレンの息子ダレル・グレンによって紹介され、ジューン・バリーのヒットとしてまた多くのトップ・タレントによってレコーディングされている。最近エルヴィス・プレスリーがリヴァイバルしたおなじみのメロディーは歌詩が思わず口をついて出てきます。
3. 夢のマリナー号
 これまたベンチャーズが“ダイヤモンド・ヘッド”“10番街の殺人”に続いて放ったヒット、アメリカ海軍の打上げた人工衛星マリナー号からヒントを得、4人のメンバーが合作したものである。SFミュージック的な感じとビート・ミュージックの結婚によって生まれた混血児的なものでスペース・ロックに編曲されてないのが感じよい。
4. かわいい小鳥
 ジョン・D・ラウダミルクの作曲になるフォーク・ソング、イギリスの18才になるマリアンヌ・フェイスフル(新人)、それにナッシュヴィル・ティーンズの競作、話題になりそうな曲、エキゾチック・サウンド風、ドラムのエコーがかかったソロが魅惑的です。
5. ある晴れた朝突然に
 ジャン・ポール・ベルモンド主演の映画主題歌。音楽は「地下室のメロディー」のミシェル・マーニュが担当、ギターで訴える哀切なメロディーはスクリーンを思いうかべて聞くと一層印象深いものとして心に残ることであろう。
6. ユア・ベビー
 ギターの加瀬邦彦がこのアルバムのシリーズで「ブルー・ジーンNo.1」、「ミスター・カーペンター」・・・などを作曲、今日はブルー・ジーンズの初めてのコーラスで歌われている。作詩は安井かずみ。内容は二人づれで歩いていたいかしたあの娘は恋人なんだろう・・・“友達のデートを冷かしているほはえましいものです。ベンチャーズものとフォーク・ソング、はてはオリジナル曲ととりまぜたセレクションの良さ、編曲、録音だけでなく、寺内タケシの最新の秘密兵器12絃ギター、(特別仕立のギターで絃が普通の倍の12本、ストリング・ボリューム・コントロールのツマミは彼の指の寸法に合せて位置ずけられている)を駆使してのこのアルバムきっと素晴らしいこと受けあいです。

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