ビート!ビート!ビート!第1集

 さあ、寺内タケシとブルー・ジーンズ登場!
あなたのハートをしびれさせずにおかない日本で初めて生れたエレキのダイナミック・サウンド。おなじみのリバプールから、サーフィン、ホット・ロッドにいたるヒット曲がずらりと並びました。
 若さがいっぱいのあなた。むずむずして日頃の憂さをふっとばしたいのはあなただけではありません。ここにもいました。寺内タケシとブルー・ジーンズ。彼らも若さをもてあましているエネルギッシュな若者達です。どうです、一緒にパーティといっちゃいましょう。寺内タケシの胸のすくようなアレンジと、そのメンバーのあふれ出る演奏で、あなたのエネルギーを巧みに発散させてくれるでしょう。
 2年前の日劇ウェスタン・カーニバルに、踊り出た彼らブルー・ジーンズの出現は、日本のビート音楽の誕生であったといっても過言ではないでしょう。ロカビリー全盛時代の再現ということをしないで、ポピュラー化したロックの新しい方向を見せてくれました。そのショーとしてのチーム・ワークの中にたぎる計算された熱っぽいアレンジの表現は新しいロックのポピュラー音楽へのなぐりこみを意味するものでした。伴奏以外のものでしかなかったロックバンドの概念がここで完全に破られ、主体性を持ったその音の躍動をたたきつけるようなサウンドが今日の彼らの基礎になってきました。
 真夏のブームを引き起したサーフィン・ミュージックも、彼らなりのアレンジと受け入れ方で日本的サーフィンの発端として、消化しポピュラー化したのも彼らでした。
 アストロノウツの日本でのヒットが、本家のアメリカにしてみればまったくの予想外であったように、いかなる流行も受け入れる側の持っている感受性にもとずくものであるからこそ、そこで何らかの変形と消化が必要となってくる。その意味でも、サーフィン・ミュージックと、リバプール・サウンドという最近の二つの繊りなす流れは決して偶然の流行ではないことがわかります。広大で若いアメリカと、伝統と歴史の重なるヨーロッパとの対照。そして、それぞれに住む若者達が求め合い反駁し合いながらも新しいものを描いてゆこうとする交感。カリフォルニアの波という土壌を考えずにサーフィン・ミュージックの発端が得られないのと同じく、新鮮なアメリカのイメージへのヨーロッパ人の瞳れを、特にイギリスの若者達が、現存の伝統の中に居座っている老人達の中にいて、単純にも、抱かないわけがありません。
 日本という傍観的な受け入れの中で、全くの両極端を見せつけられるような気持でその交流を見てきましたが、それが我々に与えてきたものが新しい形で発芽しつつあるのです。
 サーフィンというビート音楽の大きなゾーンの源流が何かを考えるよりも、リバプールの群なす若者達のひっさげてきたあのビート音楽が、今まさに逆輸入的な現象を現しているアメリカのそのブームにおいて、サーフィン・ミュージックとリバプール・サウンドが一体に同化しつつあることが明らかです。
 とにかく音楽に国籍があるわけがありません。それがどこの国のものでもかまわない。いったんそれを受け入れ吸収する以上、そこに再現されたものは新しい出発だと言えるでしょう。
 彼らブルー・ジーンズは聞く者との交流を第一義的に考えることにより、流行を新しい形で再現しその中から自分達のものを創造してゆこうとしているのは欲のあるミュージシャンとしての自覚とショーマン意識からであり、それがすなおに彼らのステージやプレイに現われています。
 バンド・リーダーである寺内タケシはウェスタン出身のギターリスト。チェット・アトキンスの影響を受けた彼のギターは非常にリズム感にあふれ、スケールの大きい躍動を感じさせるものがあります。アレンジに於ても、ギター3本、ベース1本、エレクトーン、ドラムスといった独特な編成をうまく生かして、織りなすギターとエレクトーンのダイナミックな味を出しています。ショーマンとしての彼の才能はアレンジの構成にも音楽的な厚みを加えているようです。
 熱演する寺内タケシとブルー・ジーンズのステージでの激しい動きそのままに、あなたの胸の中に溶け込んで踊り出しそうなこのビート!それはロックでも何でもない、むしろジャンルのない新しい音楽だと言えるでしょう。
ギター:寺内タケシ
ギター:加瀬邦彦
ギター:市山正英
ベース:石橋志郎
エレクトーン:鈴木八郎
ドラムス:工藤文雄

★第1面
1. おお, プリティー・ウーマン
 静かなはばの広い人気で、アメリカでは常にヒットチャートにランクされているロイ・オービソンの最新のヒット。自作自演のヒットの多い彼のもっとも彼らしい曲ですが、独特なドラム・ビートを良く生かして演奏しています。
2. テル・ミー
 最近メキメキ売出しているおなじみリバプールの5人組、ローリング・ストーンでのヒット曲。かをり黒っぽいフィーリングでビートルズに対抗していますが、そのファイトが買える点ではブルー・ジーンズのこのアレンジもまた同じ。黒っぽいムードについてゆけない日本のヒット・パレードですが、この曲だけはかなりいけそう。
3. ジャンゴ
 だいぶ前に出たデンマークのクリフターズの演奏でヒットした曲。リパブール・ムードのこの曲もまたリバイバルしそうです。
4. いとこにキッス
 何を歌ってもヒットするエルヴィスが、“ラスベカス万才”についでまたまたヒット。映画“キッシン・カズン”の主題曲ですね。彼が2役で活躍するこのコメディの中で、10曲余を歌っていましたが、この曲、フィナーレに出てきましたね。
5. ツイン・カツト・アウト
 風を切ってぶっ飛ばすなんてのは、せっかちな車のラッシュの現状では全く夢のようなお話。せめて、その気分だけでもホット・ロッド・ミュージックを聞いてというわけで、別にラッシュに悩む我々のために作られたというわけではありませんが、シャット・ダウン・ダグラスといういさましいホット・ロッド・グループの演奏曲をブルー・ジーンズが再現してくれます。
6. ウナ・セラ・ディ東京
 “恋のバカンス”でおなじみの宮川 泰のオリジナルでザ・ピーナッツ、ミルバ、マヒナ・スターズ等が歌って大変ヒットした曲ですね。ラテンぽいこの恋の歌を寺内タケシが、思い切ったアレンシで楽しませてくれます。作曲者の宮川氏もぶっとんだとか、ぶっとばなかったとか。
7. ウォーク・ドント・ラン
 ブルー・ジーンズのステージを御覧になった方は御存知、彼らのバンド・テーマになっていますね。65年早々、日本にやってきてあっと言わせたベンチャーズの往年の大ヒットですが、サーフィンの波に乗った彼らがまた“ウォーク・ドント・ラン"64”としてリバイバルさせ、これがまたまたのヒット、こちらはブルー・ジーンズ“ウォーク・ドント・ラン'65”とでもゆきましょうか。
★第2面
1. ヤア!ヤア!ヤア!
 ビートルズのことはもう何も言うことはないでしょう。ヤア!ヤア!ヤア!(ビートルズがやって来る)の彼らの初めての出演映画の主題曲でしたね。ブルー・ジーンズのこの演奏、ギター3本の持味をフルに生かして、ビートルズに負けないサウンドを作り上げています。
2. 朝日のあたる家
 かつて、ニーナ・シモンが歌った曲ですが、最近、イギリスの新鋭、アニマルズが歌ってアメリカに於ても大ヒットとなりました。このアニマルズ、リバプールの連中とはちょっと違うのは、黒っぽさの他に非常なフォーク・ソングのにおいがあることです。その野性味あふれた絶叫調の中にひそむ広漠とした哀感をブルー・ジーンズの演奏に良くアレンジされています。
3. 君を愛したい
 最近、カンツォーネがいっぱいのヒット・パレードですが、トニー・ダララが歌うこの曲、早くも出て来ましたね。激しい恋の苦しみを歌いあげている甘いメロディーが日本人向きです。
4. プリーズ・ミスター・ポストマン
 全世界のポピュラー界を文字通りひとのみにしたビートルズで、もう誰でもが知っている曲ですが、数年前にヒットして知られている曲です。
5. 星をつかもう
 プレスリーをしのがんばかりの甘い声で“サスピション”のヒットをつかんだテリー・スタッフォードの第二弾。ブルー・ジーンズで活動を共にしているほりまさゆきのヒットでおなじみでしょうね。エレクトーンの奏でる美しいメロディーは一度聞くと忘れることが出来ません。
6. ホールド・ミー
 数年前、ジェフ・チャンドラーが歌ってヒットしましたね、P.J.プロビーがすばらしいロックでリバイバル、新鮮なリバブール・ムードでヒットしている曲。
6. ブルー・ジーンと皮ジャンパー
 ブルー・ジーンと皮ジャンなんてのはいかさないと歌っているのに、どういうわけか逆な意味にとられちゃったこの歌、“サン・トワ・マミー”のヒットでも知られるアダモの曲。日本でもずいぶん前から潜在的な長期ヒットをしていますね。寺内タケシの口笛のソロが聞きどころ。

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