寺内タケシ・エレキギターのすべて

■先ずはじめに:
 レッツ・ゴー運命の大ヒットにより、レコード大賞編曲賞を受賞、エレキ・ギターの名声をいやが上にも高めた寺内タケシが、約1年半にわたる沈黙を破って、ここに再度、力作をひっさげて登場しました。エレキの神様という名に恥じずに、常にエレキ・ギターの可能性という大きな目標をかかげ、彼からエレキを取ったら何も残らないだろうとまで極言されるほど、寺内タケシは、エレキ・ギターに彼の全知全能を捧げております。
ギターを手にして20余年、持って生まれたギターへの秀れたセンスと旺盛な研究心によって、日本で初めてエレキ・ギターを完成、常に時代の先端を行く感覚の鋭さに加えて、アレンジ面でも卓越した力量を見せ、世界の寺内タケシとしてアメリカやヨーロッパでも、その名は轟いております。
 さて、今回のLPは、エレキ・ギターは万能の楽器である、ということを寺内タケシが実証することを目的として企画されたものです。エレキというと古い人間は、ただ騒々しくて非音楽的だと言って眉をひそめます。しかし、エレキの本質は、そんなものではありません。真面目で万能の楽器なのです。寺内タケシはエレキに対する誤った非難に対して、敢然と立ち上がりました。古い人達は一時的な現象にだけこだわって本質を知ろうとしないのです。このLPはそういった誤った見方をしている人達にも、是非聴いていただきたいものです。
 今回の企画で特質すべき点は、先ず第一にクラシックからロックに至るすべてのスタイルを、寺内タケシが精魂こめて弾いたことです。そして第二に、100名にわたる大オーケストラをバックに、ソロリストとして登場していることです。これこそ、寺内タケシが本物のタレントであり、ロックというワクから飛び出して、堂々と大編成オーケストラを従えて演奏するという夢を実現したのです。第三には、現在わが国に於ける催行のアレンジャー東海林修氏に企画参加していただき、このLPの内8曲を特別に編曲、寺内タケシの芸術の完成に大きく貢献していただきました。

■曲目と演奏について:
(A面)
1. グラナダ
 このLPでもっとも聴きごたえのある超力作です。アガスティン・ララの作曲した情熱的なスケールの大きい曲を、東海林修の卓越した編曲により、より大きく圧倒的で豪快な名演奏を聴かせてくれます。スパニッシュ風のカデンツァ、そして大オーケストラをバックに従えての寺内タケシの演奏が聴く人を魅了らずにはおきません。
2. 黒い瞳
 おなじみのロシア民謡をアップ・テンポのロックで聴かせてくれます。ここではバニーズをバックに従えて、息の合った演奏を聴かせてくれ、「運命」を思わせるような、早弾きが魅力です。
3. 禁じられた遊び
 スペインのクラシック・ギター奏者ナルシソ・イエペスが映画の中で演奏した名曲。映画主題曲としても知られておりますが、クラシック・ギターならぬエレキ・ギターで、この曲の感動を再現します。
4. 第三の男
 映画「第三の男」のテーマとして、戦後の名映画音楽の一つとして、いつまでも人々の記憶に残る名曲で、ツィターの名手アントン・カラスが作曲した曲です。ここでも寺内は原曲のイメージをそのままに、聴く人を追憶の世界へと導きます。
5. ジャニー・ギター
 映画音楽の巨匠ビクター・ヤングが、西部劇映画「大砂塵」のテーマとして作曲したバラードです。この曲を日本で最初に取り上げたのが、ジミー時田とマウンテン・プレイボーイズで、その時、寺内タケシはマウンテンのギター奏者としてこの曲の演奏にあたり、すばらしいテクニックをもって、わが国のポピュラー・ファンをびっくりさせました。ここではその感激を思い浮かべながら、しっとりとした演奏を聴かせてくれます。
6. 駅馬車
 カウボーイ・ソングおよび西部劇映画主題歌の代表曲です。ここではスケールの大きい東海林修の編曲により、素朴で哀愁のこもった演奏をきかせてくれます。
(B面)
1. マラゲーニヤ
 大作曲家エルネスト・レクオーナが作曲した大作「アンダルシア組曲」から独立して演奏され「マラゲーニヤ」というタイトルで、ラテン系音楽の名曲となった皆さんおなじみの曲です。この演奏は「グラナダ」と同じく東海林修の超大スケールの編曲にのって、寺内タケシのすばらしいソロを満喫することができます。寺内タケシがいかにスケールの大きい、すぐれたギターリストであるかということを証明してくれます。
2. ウォーク・ドント・ラン
 ジャズのギター奏者ジョニー・スミスが作曲し、ロックのベンチャーズによって、世界中にヒットした曲です。寺内タケシとブルー・ジーンズのバンド・テーマとしても、わが国では知られています。ここではニューハードをバックに、ラテン・ロックにのって、のびのひとした演奏をご披露します。
3. 魅せられしギター
 ロマンティック・ギターの草分けとなった甘いバラードです。ここでは大編成オーケストラをバックに、ムード・ミュージックとしての美しさを味あわせてくれます。
4. キャラバン
 この曲の原曲はデューク・エリントンとジャン・ティゾルが作曲したジャズ・ナンバーですが、さまざまなスタイルで演奏されて、スタンダード・ナンバーとなりました。ここでは、ウエスターン・スタイルのバックにのって、エコー・マシーンの効果を十二分に生かした楽しい演奏をくりひろげます。
5. テネシー・ワルツ
 オールド・ファンにはたまらない、ウエスターン・ワルツの名曲中の名曲です。寺内タケシが、エレキを初めてプロとして使用した時に、一番初めに弾いたという伝説めいた話しもあります。チエット・アトキンスばりの奏法が、すばらしい味を出しております。
6. ウスクダラ
 トルコ地方の楽しい歌で、江利チエミの歌で大ヒットしました。ここでは寺内タケシ、荻野達也とバニーズが全員登場して、全知全能をかたむけて楽しい楽しい演奏を行います。寺内効果団が、チャルメラ、古い時計、お祭りの太鼓等を持ち出して尚一層楽しさを盛り上げます。また曲中のハミングは、寺内タケシと東海林修の特別出演で、このLPの最後を飾るにふさわしいドンチャン騒ぎとなっております。

■ひとこと:
〈寺内タケシ〉
 私は、エレキ・ギターが真面目で万能の楽器である、ということを主張しております。昨年暮の私のリサイタルには、国会議員、教育委員会の方達をご招待して、理解していただきました。今回のLPでは、「運命」から一歩前進した寺内タケシを聴いていただこうと、約1ヶ年にわたる研究の結果、こうしたレパートリーを取り上げることにいたしました。私はギターと共に生き、共に育って行きたいといつも思っております。次回LPでも、きっと皆さんをびっくりさせるようなものをやりたいと思います。どうか私のこの意気込みをお解りいただきたいと思います。最後に編曲の東海林先生に厚くお礼を申し上げます。
〈東海林修〉
 寺内さんとレコーディングで正面から渡りあったのは、このLPが初めてです。彼のテクニックが非凡なことは、前々から知っておりましたが、今回のレコーディングで、それが予想以上のすばらしさであることを再認識しました。私の編曲を想像以上の良さに仕上げることが出来たのも、寺内さんの実力のたまものと思っております。
〈キングレコード・ディレクター〉
 1年にわたる検討の結果、この企画が寺内氏にとって最上のものと判断して取り上げました。特に大オーケストラをバックに一歩もひけを取らずに、リードしていった寺内氏の音楽素養の深さに感服しました。
〈レコード店より〉
 「エレキの神様」のLPが久し振りに出ました。これはすぐに品切れになりそうです。どうかお友達に、早めにレコード店へ予約なさるようにおすすめ下さい。


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