華麗なる寺内タケシの世界2

 寺内タケシのレコードは過去すいぶん数多く出ている。彼がリーダーとしてのレコードだけでも、第一期ブルー・ジーンズ、バニーズ、第二期ブルー・ジーンズ、第三期ブルー・ジーンズ (現在) を通して100枚近くのアルバムの数になろう、これより以前には、マウンテン・プレイボーイズの名リード・ギタリストとして活躍している時代があった訳で、その頃のウエスタン・ブームも考え合わせると、大変な数のレコードになるはすである。又面白いレコードとしては、日野皓正 (トランペット) と共演したレコードが異色な存在としてある。ほとんどのレコードがグループで活躍している寺内タケシたが、今回のレコードを含めて3枚だけがグループを抜け出して、オーケストラをバックに弾いている。1枚目は昭和44年に発売された「寺内タケシ・エレキ・ギターのすべて」と題するアルバムてニュー・ハードオーケストラとストリングス・セクションをつけ、東海林修の編曲によるものである。今回のアルバムと前回の「華麗なる寺内タケシの世界」は4年ぶりにグループを離れた彼の作品であったが、今回はすべての編曲を担当した宮川泰氏の力も大きく光っている。

寺内タケシはかたくななまでにグループとしてのサウンドを大切にグループ活動をしているが、時として我々は華麗なオーケストラの中にポツン!と寺内タケシを置いてみたくなる。それは華麗なギターの音色がグループでは、時として負ける時があるからで、そんな時、寺内タケシのギターに合ったアレンジのオーケストレーションが彼のギターを包みこんだとしたらどんなに素晴らしい音が出来るのではないかと考えるからだ。
 実際、寺内タケシのギターをフューチャー出来るアレンジャーがそうざらにいるとは思われない。あの彼の独得な奏法と、バカデカイ出力の音をよく理解した上でアレンジしなければならないし、又、これはレコードだけではなく、寺内タケシとブルー・ジーンズの年間を通してのステージでの大きなプログラムになるという事も考えに入れる必要がある。
 その為に寺内タケシとブルー・ジーンズのステージの構成、そして個々の曲の進行ぐあいなども知ってもらわなければならない訳である。
 こういった諸々の条件付きでこのLPのすべての編曲は宮川泰氏に引き受けてもらった訳である。宮川泰氏は、大阪芸術大学を卒業し、以降日本のポップス音楽と共に現在まで歩いて来た、日本では最もすぐれた編曲家であり作曲家である。常に第一線で、その人間性と音楽性が表に出ており、これ程人間クサイ音楽家も今の日本にはめずらしい人である。
 あらゆる音楽に関心を与せ、排他性のない音楽感覚は常に若い音楽家 (フォークやロック) の新しいものを吸収しようとしている。宮川泰氏の最も得意とする華麗な迫力あるアレンジは今回の寺内タケシのLPにはうってつけであったし、わざわざ地方まで足を運んで、ステージも見ての編曲であった。
 こういった面から見ると、寺内タケシのギターと宮川泰のアレンジメントのバトル的な面白さも充分このアルバムでは味わってもらえると思うし、すべてが1つのサウンドとなって聴く人を包みこむかも知れない。
 寺内タケシのこういったアルバムの面白さも、グループでの彼とは異った味があると思う。このアルバムの前に出されている『華麗なる寺内タケシの世界』も御試聴願えたら幸いである。制作担当 安藤賢次

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