浪花節だよ! 寺内タケシ

大変お待たせ致しました。「ギターの神様」寺内タケシが5年にわたって企面を練り、そして苦しみに耐えぬいて遂に録音を実現した「浪花節だよ!寺内タケシ」がここに完成いたしました。人間には出来ないようなことを、あたりまえのように平気でやってしまう神様、寺内タケシには「不可能」という言葉あてはまりません。やるときめたら、どんなことをしてもやってしまう実力派の彼は、この企画が出た時には、夜逃げまで考えたほどだったそうです。御承知のように浪曲は「語り」が中心となったものであり、メロディーは関東と関西との相違が多少あるにせよ、小節が個人差があるだけで、主旋律はほとんど変わりません。ですから1〜2曲はかんたんに出来てもアルバムを作るのは本当は不可能なことなのです。ところがどうでしょう。立派に一枚のLPに仕上げてしまいました。まさに寺内タケシこそは、人間ではなく、神様か怪物に他なりません。彼の160cmそこそこの身体の中身は、すべて頭脳ではないかと思うばかりであります。このLPの企画が「初まってから聞いた浪曲LPが60枚、浪曲小屋に通うこと50回、ディレクターに吹込を断るためのミーティングが40回、マネージャーをドナリつけること30回、考えすぎて眠れなくなること20回、仮病をつかおうと考えること10回を経て、遂いにこのLPを完成したのです。彼は義理人情を大切にする浪花節精神が、全身に溢れている好男子です。その彼は浪花節に取組んだことは、まさに自らをLPの中に浮きぼりにしていることに他なりません。どうかこの苦心の大作をお聴きになる時には、じっと眼をとじて、胸に手をあててお聴き下さい。きっと寺内タケシの神技が、貴方の心の奥にいつまでも残ることでしょう。それでは時間くるまで、ごゆっくりと御楽しみ下さい。

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